前回に引き続き、
「イザベラ・バードの日本紀行(上・下)」(講談社学術文庫)
から、当時の日本について気が付いた所。
・見かけないもの
今でもどうだが、近代化された国から来た人が、貧しい国に訪れた時、かならず見かけるものがある。
好奇心のある彼女のことだから、当然、大きな町にある貧しい人々が多く住む地区も歩いているはずだ。
浮浪者の記述はある。
それでも、治安が悪い地区があるという記述がない。
貧民街や、阿片窟の記述がない。
ストリート・チルドレンを見かけたという記述がない。
これはいったい、どういう意味を持つのだろうか。
・偽造食品
当時の日本には、西洋から様々な物品が入ってきた。
店に売ってある、コンデンス・ミルク、レモン・シュガー、コニャック、濃縮コーヒー。
「事実を語るべきとするなら、貪欲さのせいで日本人は厚顔無恥なペテン師となっているのです。外国製食料、飲料として売られているものの半分は実に不快で有害なくずで、東京かどこかでつくられ、~中略~老舗の名前やラベルをつけた瓶に詰めて売り出されるのです。」(「イザベラ・バードの日本紀行(上)」講談社学術文庫ページ285)。
当時は偽造食品が出回っていた。
近代化の闇の部分だろう。
今は中国での偽造食品や違法コピー問題が出ているが、昔の日本もそうだった。
それでも日本は改善してきた。
今は「日本」という名前自体がブランド力を持っている。
・教育制度
「イザベラ・バードの日本紀行」の最終章「日本の現状」で、イザベラ・バードは当時の日本の教育制度に多くのページを割いている。
女性として育児や教育にことさら興味があったのだろう。
当時の日本の教育制度については、まだまだ不十分なところはあるが、
「日本は初等学校に海軍の二倍の費用をかけていること、最良の規範に基づいて教育制度を築きたいという願望、欠点を是正し失敗から学ぶ心意気、全階級の人々が教育を受けられるようにしようとする気高い努力という点できわめて高く評価されるべきである」。」(「イザベラ・バードの日本紀行(上)」講談社学術文庫ページ394)。
そして当時の願望、心意気、気高い努力は今も引き継がれていると思う。
そしてそれが、日本が貧しい国々を支援できる分野ではないだろうか。
・キリスト教が判断基準
日本人の宗教観を、キリスト教を基準として批評している。
教義がない神教、衰退した仏教。
日本人は迷信に惑わされている。
彼女は、日本人には宗教がないから、真実を知らない、と思っている。
日本人がキリスト教の教義に従えば、心が豊かになると、断定している。
彼女に同意できないところもあるが、それは彼女の宗教心が篤いためだろう。
それでも、当時の日本人の倫理観、優しさは感心している。
日本人は無宗教といいながら、彼女は日本人の倫理観がどこからきているのか、結局、分からずじまいだった。
ただ信仰心が篤い彼女でも、キリスト教が全て善とは言っていない。
キリスト教でも様々な宗派に分かれている。
その宗派間で確執があり、彼女はそれは困ったことだと、考えている。
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世の中には、昔に比べて今の日本人を批判する意見もある。
失われたものも多くある。
それでも「イザベラ・バードの日本紀行」を読んでみると、日本の精神性は今でも多く引き継がれていると思う。
しかも生活は格段に良くなっている。
いたずらに今の生活や社会に対し不平や不満を言うことが、どれほど贅沢なことか、気が付く。
~おしまい~